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第28回 はらから公開講座 (報告)

 去る2月8日(日)、はらから地域生活支援センター(船岡駅前)にて第28回はらから公開講座が開講されました。はらから福祉会職員、はらから会会員、地域のみなさまなど約90名にご参加いただきました。
 現在、仙南圏域では法定雇用率の上昇(2%)や、平成27年から納付金の対象企業が拡大することなどから、障害者を求める企業が増加傾向にあります。一方で「はらから福祉会」を含む、仙南圏域の各障害福祉サービス事業所(就労系サービス)は利用定員いっぱいに近い状態が続いています。そのため、新規利用者の受け入れが厳しくなるところもあります。また、精神障害者の方の利用も増加傾向にあります。福祉サービス事業所からも利用者の方を積極的に一般企業につなぐことが今求められています。
 一般企業で働きたいと願う利用者の方々を、どう導けばよいのか?そこで今回、全国でも先進的な取り組みをされている「就職するなら明朗塾(社会福祉法人光明会)」の就労移行支援事業の実践をお聞きしました。
 冒頭、現在の就労移行支援事業の全国的な現況、総合支援法見直しに向けての考え方、障害者雇用促進をめぐる施策と状況、障害者雇用促進法の改正点などを具体的な数字を示していただきながら丁寧に解説していただきました。そのうえでこれからの障害者就労移行支援事業にどう取り組んでいくべきかをお話いただきました。
 
 
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↑第28回はらから公開講座
 
 
以下、内藤先生のお話の中からの一部要約です。
 
障害者雇用をめぐる現況
 
 内藤先生は、まず障害者雇用をめぐる現況を分析されました。例えば、日本の社会保障予算規模のなかで、障害福祉サービス事業に充てられる予算は国家予算の約1%しかないこと。これは置き換えれば多くの国民(100人いれば1人しか)が障害福祉に関心がないということです。障害福祉サービスに関わる多くの方々は、自分たちが利用者の方々を理解しているように周囲(事業所外の人たち)も理解してくれていると思いがちですが、実はそうではないということです。であるならば、わたしたち障害福祉に関わる人間がそのことを受け止め、価値観を変え、外に向かってこのことを伝えていくことが大切ということです。
 また、ハローワークの有効求職者数と就職件数の分析から、実雇用率と法定雇用率の間にあるギャップは離職率が高いのを示していることを内藤先生は指摘されました。そのために就労移行支援を実のあるものにするためには「離職をいかに防ぐか」が重要であり、「就職するなら明朗塾」の実践では、このことに焦点をあて離職率を下げるシステムの構築に力を注いでおられるそうです。
 
「お客様は誰か?」を再確認しよう
 
 就労移行支援について内藤先生は、ドラッカーや多摩美大の岩倉名誉教授の考えを参考に、われわれの取り組みを再確認するよう提案されました。
 特に多摩美大の岩倉名誉教授の考えにヒントを求めると、就労移行支援事業は常識的に『お客様は利用者のみなさん』で、事業所が提供する商品は『支援』と考えがちです。しかし、企業の求める人材を育成しようと思ったら、『お客様は企業』で商品は『利用者のみなさん』となるはずです。なぜなら、企業が求める人材像なくして、就労移行の支援方法など確立できるはずがないからです。
 
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↑数々の事例をお話しくださる内藤先生
 
 
「就職するなら明朗塾」の実践
 
「就職するなら明朗塾」では雇用支援・就職支援において、独自の着眼点をもって業務にあたっておられるそうです。以下はその一部です。
 

(前略)

訪問企業に歓迎される姿・格好を考えよう。「姿・格好」に無頓着なことが結果的に障害者就職を阻害する。信頼されなければ本当の相談はこない。多くの場合「うちは障害者雇用はしません」の真意は、「あなたは信用するに足らないので、あなたとは障害者雇用の相談はしません」である。(中略)
 企業の創業理念、その社会的意義を理解し、大好きになって尊敬しよう。その企業が取り組む事業の成果を受け取り幸せになる消費者の姿を知らないまま、職場での「作業」を分解し障害者に分担させようとすると、作業継続が困難になり離職を引き起こす。
 離職する障害者が「大変な作業」に耐え抜く使命を見つけられないのは、創業者の理念やその企業の存在と喜びの内情を実感できないからである。
 企業開拓とは「障害者にできる作業発見」ではない。就労意欲とは、自分が働く企業の創業者理念を尊敬し、その会社の社員の一員としてお客様の幸せのために自分の人生を捧げたいと強く願う気持ちのことである。(中略)
 
 雇用・就職支援にあたってはまず、志や創業理念とマッチすることが基本であり、その上で、職場内の人間関係(リレーション)のマッチが考慮されるべきであり、作業(ジョブ)の適性判断は大切ではあるが、この前提となる志とリレーションのマッチングを考慮しないままジョブマッチ(仕事への適性)だけを求めてはならない。
(後略)
 

 

 我々は障害者雇用を考えるときに、どうしても障害者本人に作業が適応するかどうかを真っ先に考えてしまいます。そうではなく、就職する企業の理念を理解し共感することを基本と考える「就職するなら明朗塾」の方針に、就労移行支援の真髄を見た気がしました。

 わたしたちの「はらから」も「働くことを生活の基本に」との理念のもと事業を行っています。今回の公開講座で内藤先生から教えていただいたことを元に、もう一度、「働く」ことの意義を見つめなおしたいと強く思いました。
 
(事務局・増田)
 

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