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第27回 はらから公開講座(報告)

 コロロメソッドにおける自閉症の見方  ~ 実践を通して ~ (報告)

  去る11月11日(日)柴田町船岡のホテル原田inさくらで、第27回はらから公開講座が行われました。今回は東京から社会福祉法人コロロ学舎「瑞学園」の統括施設長である久保田小枝子氏と支援課課長の羽田雅幸氏に遠く宮城の地までお越しいただきました。当日は、はらから会員や地域の方、支援学校の先生や保護者の方、はらからの施設職員のみなさんなど約100名が参加しました。

 コロロ学舎さんとのご縁は、8月にはらから役員が社会福祉法人コロロ学舎さんの「瑞学園」を見学させていただいたことがきっかけでした。「瑞学園」は重度の行動障害の方たちが暮らす施設ですが、そこの利用者のみなさんはとても重度の行動障害の施設にいる方々とは思えないほど、静かに、集団で、目的のある行動を行われていました。自閉症などの行動障害の原因を大脳生理学の視点から分析し、行動を改善する理論と実践を30年間にわたり積み重ねてこられたコロロ学舎さんにただただ驚くばかりでした。

 コロロ学舎さんがもつこれらの実践「コロロメソッド」の考え方と具体的な指導例の一端を、今回の公開講座ではお話いただきました。

 コロロメソッドの一番の特徴は、行動の分析をする際に脳の階層構造機能に基づき分析することです。そうすることで迷わず行動の分析ができるといいます。また、分析して対応する際に徹底して集団を使うということです。

自閉症の方は全国どの施設でも問題行動があります。そしてそれらの対応は十分できているとはいえません。なぜこのような状況はどうして生まれるのでしょうか。それは、自閉症を「ストレス」「信頼関係」「自発性」といった心の問題として捉えるからわからなくなってしまうのです。

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コロロ学舎「瑞学園」の久保田小枝子氏(左)と羽田雅幸氏(右)

 


  (以下、久保田先生のお話からの抜粋です。)

脳の階層化構造

 人間の脳は大きく分けて大脳新皮質、大脳辺縁系、脳幹の3つに分類されます。大脳辺縁系や脳幹は動物の脳と同じ部分です。人間らしい行動は大脳新皮質で情報を統合することでなされます。なので大脳新皮質が動いていないと行動も動物的なものになってしまいます。

自閉症の方の脳は、どこかが欠損しているとかという問題はありません。脳のハードウェアとしての機能にはなんら問題はありません。ソフトウェアの部分に問題があります。例えば「言葉」を例にとった場合、脳内に言葉のソフトウェアがある人、ない人。あってもそれらが統合して機能しない人などいろいろです。原因は自閉症の方は、頻繁に大脳新皮質への情報がブロックされてしまうことです。「わかっているのにいけないことをしてしまう。」「集中力が続かない。」などは大脳新皮質の意識レベルが落ちて、辺縁系や脳幹にレベルで活動してしまうからなのです。

自閉症の方が仕事ができなかったり、集中力が続かずふらふらしてしまうのは、仕事に対する好き嫌いや、個性の問題ではなく、脳の活動レベルの問題なのです。

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一般の人と自閉症の方の、脳の意識レベルの違い

 

こだわりとパニック

 自閉症の場合、「こだわり」の対応をしておけばそんなにひどいことにはなりません。もう一つは「反射」です。これを抑えるようにしておけば同じくひどいことにはなりません。パニックは「こだわりを崩されたとき」「反射に対して間違った対応をしたとき」に起こります。

反射の例として

先生が自閉症の子を連れだそうと手を握る。

先生の手を振り払い行かない。

再び手を握り連れだそうとする。

自閉症の子は頑強に抵抗する。

 これら自閉症の子によく見かける一連の行動は「反射」によるものなのです。この子は外も好きでお出かけもしたいと思っている。でも触られる時のタイミングと触られ方で接触反射(反発反射)を起こして先生の手から自分の手を引いてしまうという行動になるのです。この場合、手の甲の方をいきなり触れると反射から手を引いてしまいます。この状態を繰り返すと反発が強くなり座り込むなど抵抗が激しくなります。座り込んだ状態で手を引っ張ると、さらに反射に対して逆方向の力が加わるためにさらにひどくなります。(反射により、引っ張れた力と同じ力だけ反対側に引き戻そうとする。)

この場合、先生は反射を起こしにくい自閉症の子の手のひらの方に手を添え、反発を起こさない方向(この場合歩かせたい前方)に誘導することで「反射」を起こさずスムーズに連れ出すことができます。

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久保田氏と羽田氏で実演を交えながらわかりやすくご説明いただきました。

 

 この他にぴょんぴょん飛び跳ねるような行動も足のつま先の反射によるものです。この場合は反射を抑制する対応をしなくてはなりません。「この子は元気だから。」とか「なにかしたいのね。」「飛び跳ねるのが好きなのね。」といって放置すると反射による異常な行動を克服できません。この場合、床に引いた線の上を歩かせるなどすることでかかとをつけて歩くことができるようになったりします。

 これは自分の目を使って線をはずれないように歩こうとすることで、先の脳の階層化構造でふれたように、大脳新皮質による活動がおこなわれるため反射が抑制されるのです。目を使い、頭を使うことが自閉症の適応行動を導く上で大切なことなのです。

 常同行動

  自閉症の方の特徴的な行動として「体のゆれ」「両手をひらひらさせる」「空(から)にらみ」などは、脳の階層化構造からみると脳幹の部分で活動している時に現象です。大脳新皮質を使った動きではなにので、この時は適応行動がとれません。さらにこの状態の時に不用意な働きかけをすると強い防衛反射が起きてパニックなどの問題行動に結びつきます。

 (略)


 

 久保田先生のお話はすべて理論と実践に基づいたものでした。実践していないものは一つもなく、大きな説得力がありました。

 私たち関係者が自閉症の方の対応をする際、その方法がわからず、そのまま放置してしまうケースがよくあります。ともすれば問題行動自体を「これがこの子の性格だから。」と言って済ませてしまうこともあります。

 しかし、脳の階層構造と反射で分析する視点を持てば、対応することができ、問題行動を抑制できるということがわかりました。周囲で支援をする私たちが問題行動の原因となる可能性があることも学びました。。

  参加いただいた方々からも、自閉症を脳の階層構造から分析するコロロメソッドに、考え方を改めさせられたとの感想が多く寄せられていました。

 アンケートのまとめはこちら

 遠路、東北宮城まで足をお運びいただき、貴重な講演をいただいた久保田氏、羽田氏に心より感謝申し上げます。そしてまた、近いうちに今回のお話の続きを、ぜひお聞かせ願いたいと心より思っています。

(事務局)

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