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第26回 はらから公開講座 (報告)

 去る3月18日(日)柴田町槻木生涯学習センターを会場に、第26回はらから公開講座が開催されました。今回は講師に遠く岡山県のワークスひるぜん(社会福祉法人蒜山慶光園)から所長の柴田智宏さんにお越しいただきました。麺類製造で1億円超える売上を達成し、「やればできる!」を実証した柴田さんのお話を聞くために、はらから福祉会職員・はらから会会員・そして共催の「ヤマト福祉財団障害者のくらし変革塾」の塾生の方々など約120名が参加しました。 公開講座ご案内


 今回の講演で柴田さんは「ワークスひるぜん」が100万円から1億円の売り上げになるまでと、これから目指す10億円への展望を3つのステージに分けて話されました。
(以下要約になります。)

第1のステージ

 鳥取県倉吉市出身の柴田さんは、高校卒業後地元の社会福祉法人で働きはじめました。やがて障害者施設に移動になり、うどん・蕎麦の製麺事業の立ち上げを担当されました。補助金をもらわないでの事業スタートのため、当初は資金もないなか中古の製麺機を自らの手で修理して麺の製造をスタートしました。「自らの手で機械を修理しスタートしたことが、後から考えてみればよかった。」と語る柴田さん。修理を業者まかせにしないで、自ら切り開き、そして「自分に言い訳しない。」という柴田さんのスタンスがこの時生まれたそうです。
 
第2のステージ(現在)

足し算と掛け算の経営

 柴田さんは最初に「利用者一人につき300万円の売り上げ」という目標を立てました。施設の利用者数が約30名だったので、ここで約1億円という目標額が設定されました。これに至るまでは何度も失敗があったそうです。しかし、「失敗は成功のもと。」の精神で乗り越えてきました。
 ここで柴田さんは経営を、足し算と掛け算に例えて話されました。足し算は失敗を0(ゼロ)とした時、答は0にならない。しかし、掛け算では0を掛けると答えは0になってします。失敗を恐れないで、一つ一つ積み上げていくことが大切だということです。
 「ワークスひるぜん」のうどんのほとんどは、一般物流に乗せて販売されています。当然、競争相手は多く、見栄えや製造時のコストダウンは欠かすことができません。商品が売れないときは「この商品は本当にお客様が欲しいと思っている商品だったか?」を常に問うことで、ひるぜんの麺製品のレベルは一般企業になんら遜色ないものへと発展していきました。

福祉かビジネスか

 障がい者施設の工賃向上の取り組みをする際、必ずぶつかるのが職員間の温度差です。「ワークスひるぜん」でもそれは例外ではありませんでした。福祉職を希望して働く職員と、営業に駆け回る職員。職員の考え方を合わせる必要に迫られた際、「ワークスひるぜん」では「職員を福祉職と就労担当職に分ける。」という仕組みを導入しました。福祉職員は製造を通して利用者の方々の能力をあげるために一日を過ごし、就労担当職員は無限に利益を追求することを使命とし、給料もその収益から支払われるようにしました。このことで福祉もビジネスも行う施設として、事業そのものが深まっていきました。

第3のステージ(未来)

 柴田さんは次なる目標を年商「10億」と決めました。これを実現するには、法人の方向性や仲間が一つにならないと実現できません。組織として動くためには明確な役割分担をし、そして個々の力を結集する必要があります。そのために大事なのがリーダーの存在です。
 リーダーの最大の役割はマネージメントです。それは仕事を通して人を育て、人を通して仕事を発展させることです。現在柴田さんは、製造や営業は責任者に任せるようにして、自らは後進を育てることに重点をおいています。

販売のノウハウ

 柴田さんは、製造もさることながら商品を売るための営業にも大変苦労されました。営業に行く時はデータバンクから情報を収集し、相手を知ってから壁にぶちあたる。がむしゃらにぶち当たって砕けるのではなく、意図的にぶち当たってみて、自分にプラスになるものを得る当たり方をするそうです。
 相手先への提案にも時期があり、それを逃してはいけないとも話されました。例えば年越し蕎麦の提案に行く時には、1月からバイヤーにアピールをし、8月には本来の提案をするといった具合に、1年がかりの計画的な営業時期を考える必要があります。
 また、ライフスタイルの変化をとらえ、ターゲットを絞った商品開発が必要です。例えば今はやりの女子会に次いで、ママ会、パパ会なるものもできてきています。家庭のお父さんが自ら料理の腕を奮うときのメニューベスト3は「カレー」「チャーハン」「パスタ」だそうです。必然的に家庭を持つ男性向けの麺商品を開発するのであれば、カレーラーメンやパスタといった方向性が見えてくるということです。


公開講座を終えて

講演終了後の質疑応答も盛んに行われ、時間をオーバーしてしまいましたが、柴田さんには、どの質問にも真摯にそして丁寧にお答えいただきました。
 その後場所を2階和室に移して、ワークスひるぜんさんで製造された、うどんの試食会が行われました。醤油をぶっかけただけの質素なうどんですが、小麦の甘さが感じられるとても美味しいうどんでした。(醤油なしでも食べられました。)さらに参加者全員にお土産までいただきました。美味しいうどんのゆで方をご指導いただきましたひるぜんの立岡さん、小谷さん、ありがとうございました。
 遠路、岡山からお越しいただいた柴田さん。お疲れさまでした。公開講座でお話しを聞いた施設職員のアンケートを見てみると、柴田さんと同じように「自分に言い訳しない。」ことを実践していきたいという意見がいくつも見られました。よい講座を本当にありがとうございました。

ヤマト福祉財団ホームページで「ワークスひるぜん」が詳しく紹介されています。2012年1月20日のヤマト福祉財団ニュース(PDF)33号をご覧ください。

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